SOUTH AMERICAN ENVIRONMENT RISK NETWORK
プロジェクトについて
SAVERNET
現在、大気環境の変化は、オゾン層破壊、温暖化問題、都市大気汚染といった形で人類だけでなく、地球の生態系に長期間に影響を与え、深刻な環境リスクとなっている。特に、地球大気中に存在する微少量の分子及びエアロゾルが、地球の環境・生態系の変化に大きな影響を与えると言われている。こうした大気中の微量成分は、人為由来のものと自然由来のものが存在しているが、発生源から広範囲に拡散するため、広い領域にわたる観測網の整備が求められている。
本事業対象地域であるアンデス地域は活火山が多く、噴火によって飛散した火山灰は、周辺地域の農作物に被害をもたらすだけでなく、火山から遠く離れた場所においても航空機の運航に深刻な影響を与えることが報告されており、アンデス地域諸国に大きな影響をもたらしている。また、アルゼンチン及びチリ南部のパタゴニア地域は、南極の極渦の通り道にあり、オゾンホール直下に入ることがしばしばある。当該地域の住民にとっては、オゾン層の破壊による紫外線量の増加は深刻な問題となっており、皮膚がんや白内障の原因となる紫外線量の正確かつタイムリーな測定に基づいた迅速かつ適切な対応が求められている。
しかし、アンデス及びパタゴニア地域を含む南半球においては、先進諸国が数多くある北半球に比べて地上観測網の整備が立ち遅れており、十分な観測体制にない。また、大気環境観測は、衛星に搭載した機器により全地球的なモニターが可能となっているが、データが公開されるまでに一定の時間を要すること、測定精度が不十分なこともあり、即応性といった観点、影響評価に十分な精度のデータを得るといった観点から、地上からの観測も不可欠である。以上の問題を踏まえ、アルゼンチン及びチリより、アンデス及びパタゴニア地域において、エアロゾルおよびオゾン層破壊という2つの大きな大気環境リスクをモニタリングし、適正に評価し、迅速に地域社会に警告できる大気環境リスク管理システムの構築が主要な課題となっている。
SATREPS
(注釈1)地球規模課題:一国や一地域だけで解決することが困難であり、国際社会が共同で取り組むことが求められている課題(環境・エネルギー問題・自然災害(防災)・感染症・食糧問題など)
(注釈2)社会実装: 具体的な研究成果の社会還元。研究の結果得られた新たな知見や技術が、将来製品化され市場に普及する、あるいは行政サービスに反映されるなどにより、社会や経済に便益をもたらすこと。
経緯
国際協力機構(JICA)は2013年4月、アルゼンチン政府とチリ政府の両国と3ヶ国による共同研究プロジェクトの協議議事録を締結しました。
このプロジェクトの主目的はプロジェクトで観測されるオゾン、紫外線、エアロゾルの各種データがアルゼンチン及びチリの研究機関から2ヶ国の気象局や関係機関へと準リアルタイムで提供される“大気環境リスク管理システム”の開発にあります。
プロジェクト上位目標
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関係各機関が紫外線、エアロゾル、その他大気環境要因によるリスク、損失を最小限にするために、“大気環境リスク管理システム”を利用する。
期待される成果
- 準リアルタイムエアロゾルモニタリングネットワークが開発される
- エアロゾルの特性(主に発生源、種類、輸送経路、季節変化)が把握される
- 現存するオゾンと紫外線観測システム(ミリ波分光放射計、オゾンライダー、および他の関連測定器)の高精度化が図られる
- モニタリングに基づき、オゾンホールの変動および低オゾン状態の空気塊の南米中緯度帯への拡散・混合過程が分析される
- 大気環境リスクに係る、統合解析システムが開発される
- 本プロジェクトで分析されたデータを関係各機関と共有するシステムが開発される