チリ マゼラン大学へ新たなエアロゾル観測機器が導入予定

LIDAR」と呼ばれるエアロゾル観測システムが数ヶ月以内に導入されます。チリ、日本、アルゼンチンの三国が進めるプロジェクトに参加している研究施設にとって、この新システムは観測研究を補完してくれるものとなるでしょう

南米における大気環境リスク管理システムの開発は、この三国間プロジェクトに参加するプンタアレナスとリオガジェゴスの研究機関で進められているオゾン層・紫外線・エアロゾルの科学的研究成果によって着実に進展しています。

先日、チリ・マゼラン大学の大気研究所は、日本から地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(英語表記の頭文字をとってSATREPSと呼ばれます)の視察団と名古屋大学の研究者の訪問を受け、プロジェクトの活動状況について説明しました。日本の視察団はチリのスタッフによる研究チームとミーティングを行っただけでなく、マゼラン大学の諸施設と2015年に同大学が導入した開発中の車両搭載型移動式大気観測装置を視察して周りました。

プロジェクトのチリ代表でありマゼラン大学大気研究所の研究者であるFélix Zamorano博士は視察の後、本プロジェクトがこれまでにアルゼンチンと共同でのキャンペーン観測の実施や、マガジャネス地域における大気観測の継続を目的とした新システムを徐々に構築するなどの実績を残しており、計画の進捗はすでに中間期に入っていることを伝えました。なお新システムの構築に関しては、オゾンゾンデ観測に加え、LIDARというエアロゾル追跡のための新しい装置がまもなく始動することを強調しました。Zamorano博士によれば、これは大気の観測にレーザー光を用いるものであり、4月の終わりには実用が見込まれているとのことです。Zamorano博士は「この装置が稼働すれば、この地域で今私たちが吸っている空気の質について初めての精密な調査結果が得られることになると期待できます」と付け加えました。

さらに車両搭載型移動式大気観測装置には、今後気象ステーションも搭載される予定であることも明らかにしました。また同じくこの移動式観測車両に搭載予定のオゾンゾンデについては遅くても5月には稼動が見込まれており、9月1日以降の観測シーズンに活用される予定とのことです。「この新装置による移動観測が可能になれば、私たち研究者はこの地域内にあるいくつもの重要な観測地点でモニタリングができるようになります」と解説しました。

オゾン
Félix Zamorano博士はオゾン層の現在の状態やプロジェクトの初期成果で得られた情報について意見を求められ、以下のように回答しました。「私たちは破壊されたオゾン層が修復しているか否かを判断し、オゾン層破壊が与える影響評価を行う体制を強化しつつあります。私たちが集めたデータや活動によれば、オゾン層の状態はまだ回復には転嫁せず現状維持の状態が続いています。ただしオゾン層破壊が進行している傾向はありませんでした。」

最新の観測結果によれば、今年は南極圏の上空のオゾンホールはより長い時間そこに留まり南米側には移動してこなかったため、チリ国内を通過する影響は重大なものにはならなかったとのことです。同氏は「今年オゾンホールがこの地域を通過する回数は増加したものの、そのうちの大半は夜間であったため最大の危険は避けられました。また、日中に通過した際や1~2日停滞した際もほとんどの場合が夜から通過し始めていました。」と述べました。

名古屋大学の水野亮教授も自身の見解を示しました。「オゾンホールは依然として存在し、時に拡大し時に縮小し、変動をしています。まだ今後も研究を掘り下げていく必要のある現象なのです。日本ではこの問題に危機感を持って取り組んでいて、今後どのようにオゾンホールの状態が変化していくかを予測できるコンピューターモデルの開発を通して、オゾンホールの研究を大きく進展させています。」

SAVER-NET プロジェクト
「南米における大気環境リスク管理システムの開発プロジェクト」(略称SAVER-NET)と名づけられたこの計画は5年間の計画で、2013年4月に開始しました。マゼラン大学へは日本からの研究者の派遣や、最新設備の導入を行ってきました。
 資金面は日本の国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)と、同じく日本に本部を置き、チリとアルゼンチンにも事務所を持つ独立行政法人国際協力機構(JICA)の補助金が負担しています。金額は合計300万USドルで、そのうち約50万ドルはマガジャネス・イ・デ・ラ・アンタルティカ・チレーナ州とアイセン・デル・ヘネラル・カルロス・イバニェス・デル・カンポ州の一部での大気観測の資金としてマゼラン大学に与えられます。
 プンタアレナスでのキャンペーン観測はオゾンゾンデと呼ばれる測定方法で行われ、アルゼンチンのレーザー応用研究センター(CEILAP)のLIDER技術を用いてアルゼンチン国防省科学技術研究所(CITEDEF)の研究者がリオガジェゴスで行うレーザー観測と同時に実施されます。

(出典:チリ マゼラン大学)

 SAVER-Netプロジェクトは、エアロゾル、オゾン層、UV放射の状態を監視することにより、大気環境リスク管理システムです。

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チリ

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